森林セラピーとは?

「森」の持つ力の研究が進み、中でも癒し効果の高い森が「森林セラピー基地」として認定されるなど、身近なものとなってきた『森林セラピー』。それはいったいどういうものなのか?どういった効果が得られるのか?当サイトではそんな『森林セラピー』についての解説や、全国の「森林セラピー基地」をご紹介をして行きたいと思います。

屋久島の縄文杉などの「巨木ウオッチング」を合わせて森林浴を楽しむ人が増えています。そこから得られる森林浴の効果は科学的なものより精神的なものが大きいと言われてきました。もちろん科学的な効果もあり、樹木が発散するフィトンチッドと呼ばれる物質が作用して免疫力の向上などに寄与するという論文も発表されています。

  • 森林の空気は排気ガスなどが含まれる都市部の空気より体に優しい
  • 樹木の香りが心を落ち着かせ、リラックス効果をもたらす
  • 枝葉のさわめきが1/fの揺らぎを持っているので気持ちが安らぐ
  • 日常と離れた場所にくることにより雑念を忘れられる(転地効果)

以上のように近年では、脳波測定・反応速度・唾液中ストレスホルモンの濃度・心拍の変動・心理的調査などを用いたリラックス効果などの定量化が試みられており、森林浴が人の精神に与える影響の科学的根拠が示されるようになりました。

このように「森林浴」の効果を科学的に解明し、こころと身体の健康に活かそうという試みが「森林浴」から一歩進んだ『森林セラピー』です。森林の地形や自然を利用した医療、リハビリテーション、カウンセリングなど、森林環境を総合的に使いながら健康を増進していく取組で、森林レクリエーションを通じた健康回復・維持・増進活動でもあります。

科学的な効果と実験

2005年、都市部のいわゆる「お疲れサラリーマン」を被験者とした実験では、森林浴翌日の採血・採尿で生理的な変化を調査したものです。その結果、2泊3日の滞在によってNK細胞活性が52.6%向上したことが確認され、同時に抗がんタンパク質の濃度も上昇していることが確認されました。 この実験は2006年にも継続され、2泊3日の森林滞在で約56%のNK細胞活性を再現するとともに、日常生活・都市部への2泊3日の旅行で対照実験を実施。日常での複数の検査や都市部への旅行ではNK細胞活性に変化がみられなかったことから、森林の環境が免疫機能の向上に特異性を持つことが実証され、さらに、30日後もNK細胞活性が一定レベルで継続していることが判明し、森林浴での健康増進が持続効果を持つことが明らかとなりました。 医療行為に至るまでには臨床事例がまだ圧倒的に不足していますが、将来的にがん予防、健康増進などへの活用法が研究されています。

これらの結果は森林セラピーの実施地の選定などに利用されており、2006年4月には全国で10カ所の森林が、2007年3月には第2期として14カ所の森林が「心身の改善効果をもたらすことが科学的に証明された森」として発表されました。現在、同様の調査が各地の森林で進められており、将来的には全国数十の森で健康増進のメニューが展開される見通し。森林医学の現状は黎明期といえます。 なお国内の森林セラピーは、「クナイプ療法」(ドイツバイエルン州のバート・ウェーリスホーフェン市が発祥地といわれる)などをモデルとしています。

主な実験の内容

心拍変動性(HRV)

心拍の揺らぎを解析することにより、自律神経活動を副交感神経活動(リラックス時に昂進)と交感神経活動(ストレス時に昂進)に分けて数値化

唾液中コルチゾール

代表的なストレスホルモンで、ストレス時に濃度が上昇する

唾液中アミラーゼ

ストレス時に濃度が上昇することが知られており、現場にて1〜2分で測定が可能な簡便な測定法

血圧・脈拍測定

収縮期・拡張期血圧、脈拍数が低下する

実験結果

これらの実験を、都市部と森林部で行った結果、唾液の中のコルチゾールという「ストレスホルモン」が森林では濃度が低くなるということが判明。
また、心拍の"ゆらぎ"の測定で、森林ではストレスの高い時に高まる"交感神経活動"が抑制され、リラックスした時に高まる"副交感神経活動"が昂進するということ、さらには脳の前頭前野の活動が鎮静化しリラックスすることがわかりました。免疫能についても2泊3日の森林浴でNK活性(ナチュラルキラー活性)が高まることがわかりました。

関連書籍

  • 『森林浴はなぜ体にいいか』 - 2003年 (独)森林総合研究所 文春新書 宮崎良文著 ISBN 978-4-16-66032-99
  • 『森林浴がヒトNK細胞を活性化させる』 - 2005年 日本医科大学 李卿著
  • 『第77回日本衛生学会総会抄録 科学的視点から森林浴の癒し効果を検証する』- 2007年3月25日〜28日 大阪国際交流センター
  • 『森林浴が生体免疫機能を高める(シンポジウム:科学的視点から森林浴の癒し効果を検証する)』 - 2007年3月 第77回日本衛生学会総会 李卿著
  • 『プレスリリース 森林浴がヒトNK(ナチュラル・キラー)細胞を活性化させ、その持続効果が認められた!』-2007年3月23日(独)森林総合研究所
  • 『プレスリリース 森林浴が抗がんタンパク質を増加させること等について』-2006年10月13日(独)森林総合研究所
  • 『森林技術 今月のテーマ/森林の持つ癒し効果 -本格始動した森林療法』-2006年3月号(社)日本森林技術協会
  • 『フィトンチッドと森林浴について』-1998年11月 森孝博著 岐阜県森林研究所

五感でとらえる森の力

五感とは、人間に備わっている目・耳・舌・鼻・皮膚を通して生じる5つの感覚のことです。

人間はもともと自然環境の中で生活していました。現代の人工的な環境での生活は、本来の人間の生活とは違い、大変なストレスを与えます。森林セラピーはこのような環境からのストレスを改善するという点からも大きな効果を持っており、人々の心を癒すといわれています。
このような、心身に癒しを与える「森の力」を享受する方法として、最も基本的なやり方は「五感」を働かせることです。森の中や周辺で耳や目、鼻、手足、味覚等の五感のアンテナを研ぎ澄ませて、木々の息吹や風のざわめきを感じてください。そして、その中でいちばん自分に合ったリラックス法を探してみましょう。人によって心地よく感じるポイントは異なりますが、自然の中で本来あるべき場所にいるという快適感を全身で感じて楽しんでみてください。

見る

映像から得る癒しの力
森の風景を見ることで体が受けるリラックス効果は、とても大きなものです。ただ森の緑を眺めるだけでも血圧の低下や脳活動が鎮静化するなどの作用をもたらします。また、日本人特有の感覚として、満開の桜を見ることで脈拍が増し、わくわくする傾向があります。

嗅ぐ

鼻で感じるリフレッシュ効果
香りが脳に働きかける作用は直接的で大きなものです。特徴的なスギやヒバといった木の香りは血圧や脳の活動を鎮静化させ、怒りや緊張などを緩和させる効果があります。また、大きく深呼吸することで森林にたくさん放出されている"フィトンチッド"を取り入れることができます。フィトンチッドは雨上りやお昼前までが非常に多く取り入れやすいので、午前中の散歩がおすすめです。

聴く

森の音に天然の鎮静効果
一見静かな森の中でも、木立の葉が風に揺れる音や小鳥のさえずり、水の流れる音などが、絶え間なく響き続けています。ささやかなこれらの音を聞くことによって、人間の体では、血圧の低下や脳活動の鎮静化などの効果が起こることがわかっています。また、目を閉じることで、耳への意識がいっそう集中するでしょう。普段聞きなれている車の音や生活音とはまったく違う居空間に誘ってくれることと思います。

触る

自然の感触を楽しむ
手のひらや足の裏で、木の葉や木の幹に直接触れてみましょう。人工的な素材ではなく、自然由来のものに触れることで、よりくつろいだ感覚や心地よさを感じることができます。また、気に入った巨木が見つかったら抱きつくことでも心を落ち着かせる作用があるのでおすすめです。是非、生きた木や自然に触れてみてください。

味わう

自然の味を楽しむ
森林は有機物の宝庫。森林セラピー認定基地の中には、木の実やキノコ、湧き水などを味わうことのできる森があります。子供の頃から都会に住んでいると、食べられる木の実や草がある事すら知らない子供や大人も多くおられると思います。新鮮で力強い大地の滋味を口にすることで、心の充足感はもちろん、体にもよい効能を享受することができます。季節に応じた森の恵みを堪能してください。